「置く」から「飾る」へ。ウォーターサーバーが主役になる時代
かつてのウォーターサーバーは、利便性を重視するあまり、デザイン面では妥協せざるを得ない存在でした。白く無機質な外観が多く、キッチンやリビングの隅にできるだけ目立たないように置かれていたのです。暮らしを豊かにする機能がある一方で、その見た目は丁寧に整えた空間の雰囲気を乱す要因となり、多くの家庭が「機能性と美観の両立は難しい」と受け入れてきました。
しかし今、その常識が大きく変わりつつあります。現代のウォーターサーバーは、単なる給水機ではなく、空間を彩る「インテリア・オブジェクト」へと進化しています。その背景には市場の成熟があります。以前はオフィス向けが主流だったウォーターサーバーも、今では家庭専用として一からデザインされるようになりました。これは、消費者が「水」だけでなく、その製品が生み出す美しい暮らしそのものに価値を見出し、デザインに対して投資する時代になったことを示しています。
この変化を牽引しているのが、amadanaやnendoといった世界的デザインブランド、そして安積伸氏や山﨑晴太郎氏といった一流のプロダクトデザイナーたちです。彼らの参入により、ウォーターサーバーは家電からアートピースへと進化しました。その品質はグッドデザイン賞など権威あるデザインアワードの受賞実績からも裏付けられています。
この記事は、単なる製品紹介ではありません。あなたの暮らしをワンランク上げる「最後のピース」となるウォーターサーバーを選ぶための専門ガイドです。「置く」から「飾る」へ——。空間の主役となるウォーターサーバーとの出会いが、ここから始まります。
美しい暮らしを実現するための3つの視点
空間に調和するウォーターサーバー選びの基本
優れたインテリアが部屋に心地よさと調和を生み出すように、ウォーターサーバー選びにも大切な指針があります。
スペック比較を始める前に、まずは空間全体を美しく見せるための「3つの視点」を理解しましょう。これを押さえておくことで、後悔のない選択ができるようになります。
視点1:「生活感を消す」という究極のデザイン
インテリアで最も避けたいのが、生活感が漂う雑然とした雰囲気です。どれだけ高級な家具を揃えても、日用品が無造作に置かれているだけで空間全体が乱れて見えます。
ウォーターサーバーにおいて、この生活感を強く感じさせる最大の原因は、外にむき出しになった大型のウォーターボトルでした。青く透明な樹脂製ボトルは、利便性の象徴であると同時に、インテリアを台無しにする要素でもあったのです。
この問題を根本から解決したのが「ボトル隠蔽タイプ」の登場です。ボトルを隠すという発想が、ウォーターサーバーを家電からインテリアへ進化させました。
ボトルが視界から消えることで、本体は家具やオブジェのように自由にデザインできるようになり、多くの著名デザイナーが参入するきっかけにもなりました。
ボトルを隠す方法には大きく分けて2つあります。
種類 | 特徴 | 代表的なモデル |
---|---|---|
足元ボトル設置(下置きタイプ) | サーバー下部の扉内にボトルを収納。ボトルを持ち上げず交換できるため身体への負担が軽い。 | フレシャス「Slat」、コスモウォーター「smartプラス」 |
着脱式ボトルカバー | 本体一体型のカバーでボトルを覆い隠す。残量確認用のスリット付きもあり、デザイン性と機能性を両立。 | アクアクララ「AQUA FAB」、プレミアムウォーター「amadanaスタンダードサーバー」 |
特に下置きタイプは、約12kgもある重いボトルを持ち上げる必要がなく、ユニバーサルデザイン(誰にでも使いやすい設計)として高く評価されています。
一方、着脱式カバータイプは、デザイン性を保ちながら残量を確認できる点が魅力です。例えば「AQUA FAB」では、細いスリットから水の残量を確認できる工夫が施されています。
ボトルが見えないこと。
この一点が、ウォーターサーバーを「隠す家電」から「見せるインテリア」へと変化させる鍵となりました。
視点2:空間と対話する「フォルム」と「質感」
ウォーターサーバーをインテリアとして考えるなら、形状(フォルム)と素材の表情(質感)が空間とどう調和するかを意識することが大切です。
フォルム(形)の選び方
- 直線的でミニマル
例:「AQUA FAB」
無駄を削ぎ落とした直線的なデザインは、モダンな空間に秩序をもたらします。 - スリムで背の高いタイプ
例:「amadanaスタンダードサーバー」
限られたスペースにもすっきり収まり、圧迫感を軽減します。 - 柔らかな有機的フォルム
例:「dewo」
角が丸みを帯びたデザインは、空間に優しさと温かみを与えます。
家具の高さを揃えると部屋が整って見えるように、ウォーターサーバーの高さも周囲の棚やカウンターに合わせるとより美しく見えます。
質感(素材)の選び方
- マットな質感
例:「フレシャス Slat」
光を抑えて空間に自然に溶け込み、北欧テイストやナチュラルなインテリアと相性抜群です。 - 光沢仕上げ
冷蔵庫や電子レンジなど、ほかの家電と質感を合わせるとモダンな印象を強められます。 - 木材やウッド調パネル
例:「amadanaグランデサーバー」「smartプラス」
無機質になりがちな家電に温かみを加え、アクセントとして機能します。
視点3:物語を宿す「デザイナーズ」という選択
最後は、製品の背景にある「物語性」に注目する視点です。
amadanaやnendo、安積伸氏、山﨑晴太郎氏といったデザイナーやブランドが手がけるモデルを選ぶことは、単なる美しい製品を手に入れるだけではありません。そこにはデザイン哲学や試行錯誤の歴史、製品に込められた思想が反映されています。
デザイナーズモデルは、大量生産品にはない「作品」としての価値を持ちます。部屋に置くだけで、所有者の美意識や価値観を静かに物語る存在となるのです。
その背景を知ることで、日常的に水を飲むという行為も、より豊かで意味のある体験へと変わります。価格や機能では測れない満足感をもたらす要素が、この「物語性」にあります。
インテリアスタイル別・おすすめモデル
前章で紹介した3つの視点を踏まえ、ここでは実際のインテリアスタイルに合わせておすすめのウォーターサーバーをご提案します。
ご自身の住まいをイメージしながら、理想の一台を探してみてください。
モダン&ミニマルな空間に
美学の特徴
直線的なフォルム、モノトーンを基調とした色合い、装飾を排したシンプルさが特徴です。
静かな存在感を放つウォーターサーバーが空間に自然に溶け込みます。
- アクアクララ AQUA FAB
プロダクトデザイナー山﨑晴太郎氏が手がけた、完璧なキューブ型デザイン。
操作トレイを本体に収納できる仕組みがあり、ミニマリストの理想を体現したモデルです。
余計な要素を排し、まるでウォーターサーバーであることを忘れるほどの一体感があります。 - フレシャス Slat(マットブラック)
マットな質感が空間に高級感と落ち着きを与えます。
安積伸氏がデザインしたこのモデルは、見た目だけでなく使いやすさも追求。
安全性にも優れており、デザインと機能性を両立しています。 - プレミアムウォーター AURA
デザインオフィスnendoが手がけた、存在感を最小化した究極のミニマルデザイン。
給水口や操作パネルをすべて視界から隠し、壁面に溶け込むような外観が特徴です。
未使用時はライトも消え、まるで家具の一部のように空間になじみます。
北欧&ナチュラルな住まいに
美学の特徴
天然木の温もりやアースカラーを基調にした優しい色合い、柔らかなフォルムがポイントです。
自然素材を感じさせるデザインが心地よい暮らしを演出します。
- プレミアムウォーター amadanaスタンダードサーバー(ブラウン)
日本の美意識を重視するamadanaのデザイン。
スリムな形状と温かみのあるカラーが、オーク材やリネン素材のインテリアと調和します。 - コスモウォーター smartプラス(ウッド)
天然木を思わせるパネルが特徴で、北欧家具との相性が抜群です。
家族で使いやすい機能性とデザイン性を兼ね備え、グッドデザイン賞も受賞しています。 - フレシャス dewo(ペールブルー)
丸みを帯びた柔らかなフォルムと淡いブルーのカラーリングが、部屋に優しい印象を与えます。
白やグレーなどの落ち着いた色合いでまとめた北欧テイストのお部屋におすすめです。
シック&インダストリアルな部屋に
美学の特徴
金属やダークトーンを取り入れた重厚感のあるスタイル。
洗練された無骨さと上質感を両立するウォーターサーバーがよく映えます。
- プレミアムウォーター amadanaグランデサーバー(ブラック/チョコレート)
天然木の重厚な台座と深みのあるカラーリングで、まるでオブジェのような存在感を放ちます。
空間のアクセントとなり、リビング全体を引き締める力を持ちます。 - ウォーターワン JLサーバー(ピアノブラック/ワインレッド)
光沢感のあるピアノブラック仕上げがモダンでラグジュアリーな印象を与えます。
ワインレッドは部屋全体の差し色として映え、インダストリアル空間に個性を加えます。
デザイナーとブランドの哲学
ここでは、単なる家電を超えたウォーターサーバーを生み出しているデザイナーやブランドの哲学に迫ります。
背景を知ることで、製品への理解や愛着が一層深まります。
amadana × Premium Water:「日本の美意識」とテクノロジーの融合
amadanaは、日本独自の美意識と現代技術を融合させた家電ブランドです。
江戸時代、漆器が「ジャパン」と呼ばれ海外で称賛されたように、現代の暮らしにも静かな調和をもたらすことを使命としています。
- amadanaグランデサーバー
天然木を使用した置台が特徴で、日本建築や家具が持つ自然への敬意を表現。
操作パネルは使用しない時に完全に隠すことができ、道具が主張しすぎない「引き算の美学」を体現しています。
家電ではなく、空間を構成する家具としてデザインされた一台です。 - amadanaスタンダードサーバー
グランデサーバーの哲学を継承しつつ、横幅26.5cmのスリムなサイズを実現。
さまざまなインテリアに調和する、普遍性を持ったデザインとなっています。
安積伸 × FRECIOUS:「心地よさ」を追求した機能美
ロンドンを拠点に世界で活躍するプロダクトデザイナー・安積伸氏。
彼のデザインは、ユーザーの日常を深く理解し「心地よさ」という体験を形にすることを目指しています。
- フレシャス Slat
従来のウォーターサーバーが抱えていた不満を、デザインの力で解消したモデル。 - 操作ボタンは幼児の手が届かないサーバー上部に配置し、安全性を確保。
- 約12kgの重いボトルを足元で交換できるため、力が弱い方でも安心。
- 給水口下のトレイは鍋も置ける広さがあり、料理中の利便性を高めます。
- 静音設計により、寝室などの静かな空間にも設置可能。
これらの配慮が評価され、キッズデザイン賞やグッドデザイン賞を受賞。
見た目の美しさと使いやすさを完璧に両立したモデルとして高く評価されています。
山﨑晴太郎 × Aqua Clara:「未来の当たり前」を描くミニマリズム
アートディレクターの山﨑晴太郎氏が手がけた「AQUA FAB」のコンセプトは、未来の当たり前を創ること。
一時的な流行に左右されない、10年後も愛される普遍的なデザインを追求しました。
その答えは、徹底したミニマリズムです。
ウォーターサーバーでありながらも、あらゆる空間や世代に馴染むシンプルなキューブ型フォルム。
収納式トレイやシームレスなボトルカバーによって、余計な線や継ぎ目を一切排除しています。
2018年度のグッドデザイン賞では「家庭のキッチンでもノイズにならない存在感」が高く評価されました。
AQUA FABは、自己主張せず空間に溶け込むことで価値を発揮するモデルです。
nendo × Premium Water:「ストレスを与えない」存在の哲学
世界的デザインオフィス・nendoが手がけた「プレミアムウォーター AURA」は、
人にも空間にもストレスを与えないという繊細なコンセプトから誕生しました。
- 幅30cmの極限までスリムな設計。
- 操作パネルは天面に配置し、正面からはボタンが一切見えないデザイン。
- 給水口はスライドパネルで隠し、使うときだけ姿を現す仕組み。
- 未使用時はライトも表示も消灯し、空間に完全に溶け込むよう工夫。
AURAは「存在感を消す」という新たなウォーターサーバー像を提示しました。
2024年度グッドデザイン賞の受賞は、この革新性が高く評価された証です。
デザイン比較ガイド
ここまで紹介したデザイン性の高いウォーターサーバーを、一目で比較できる一覧表を作成しました。
単なるスペック表ではなく、それぞれの哲学や特徴を踏まえたガイドとして活用してください。
モデル名 | デザイナー/ブランド | 主要デザインコンセプト | カラーと質感 | 際立つ特徴 | グッドデザイン賞 | こんな空間・人に最適 |
---|---|---|---|---|---|---|
プレミアムウォーター amadanaグランデサーバー | amadana | 天然素材を活かしたレトロモダンなエレガンス | ブラック、ホワイト、ブラウン、チョコレート | 天然木の置台、使用時以外は隠せる操作パネル | – | 洗練されたリビングの主役に。大胆なデザインを求める人へ |
フレシャス Slat | 安積伸 (Shin Azumi) | 「心地よさ」を追求した、美しく使いやすい機能美 | マットホワイト、マットブラック | 足元ボトル交換、鍋も置けるワイドトレイ、安全性重視 | 受賞 (2017) | デザインと機能性を重視する家庭。静かな書斎や寝室にも最適 |
アクアクララ AQUA FAB | 山﨑晴太郎 (Seitaro Yamazaki) | 未来の当たり前を目指す、ミニマルなキューブデザイン | ホワイト、ブラック | 収納式トレイ、残量が見えるスリット付きボトルカバー | 受賞 (2018) | モダンキッチンや調和を大切にするインテリアに |
プレミアムウォーター AURA | nendo | 存在感を最小化し、ストレスを与えない佇まい | ホワイト、ブラック、シルバー、ピンクゴールド | 超スリム設計、スライドパネルで隠れる給水口、天面操作 | 受賞 (2024) | 繊細さと上質さを求める空間。究極のミニマリストに |
コスモウォーター smartプラス | 自社デザイン | 家族に寄り添う機能性と、順応性の高いデザイン | ホワイト、ブラック、ピンク、ウッド | 特許取得の足元ボトル交換、光センサーによる省エネ機能 | 受賞 (2017) | ナチュラルや北欧テイストの空間に。実用性重視の家庭向け |
まとめ
ウォーターサーバー選びは、もはや単なる家電選びではありません。
それは、自分の暮らしの価値観を空間に反映させる「インテリアデザインの最終仕上げ」とも言えます。
1台のウォーターサーバーには、デザイナーの想い、ユーザーへの配慮、時代を映す美意識が凝縮されています。
朝一番の白湯、仕事の合間のコーヒー、一日の終わりの一杯の水——。
そんな何気ない瞬間に寄り添い、日常をより豊かで美しい体験へと変えてくれる存在です。
最高のウォーターサーバーは、単なる便利な給水機ではなく、
あなたの空間と心を潤す静かなパートナーです。
ぜひもう一度、このガイドを参考にしながら、暮らしを完成させる運命の一台を選んでください。
その先には、より美しく心地よい毎日が広がっています。